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はたらくこと

公務員の人事異動がつらい|「リセット」に疲弊した50代の本音

内示が出る日の夕方、電話で一本の連絡が入ります。

次にどこへ行くのか。それを知らされる瞬間、胸に最初に浮かぶのは期待ではありません。「また一からか」という気の重さと「やっぱり希望はとおらなかった」というがっかりです。

異動って、しんどいですよね。

同じ気持ちのまま検索してここにたどり着いた人がいるかもしれません。異動がつらいと感じているのは、あなただけではありません。

私は地方公務員として30年以上働いてきた50代です。異動には特定の相手との癒着を防ぐ、いろいろな仕事を経験させるといった目的があると言われています。組織の側の理屈は理解できます。それでも私には——配属先ひとつで生き方まで振り回されている。そう感じられてなりません。

公務員の異動は、なぜこんなにつらい?

このつらさの正体は仕事・人間関係・環境の3つが数年ごとに同時にリセットされることにあります。あなたの我慢が足りないからではありません。

先ほど書いたとおり異動には組織としての目的があります。ただ、働く側から見ると風景はまるで違って見えます。

「この分野の仕事を専門に続けたい」という積み上げが数年でいったん途切れる。そしてまた、まったく畑の違う部署でゼロから始まる。これが退職までくり返されます。

私の場合:異動のたびに起きていたこと

具体的に何がこたえるのか。私の場合は大きく3つでした。

①仕事の勝手がわからず、一から覚え直すこと。前の部署で当たり前にできていたことが新しい部署では通用しません。ルールも書類の流れも専門の言葉も違う。覚えても覚えても追いつかず、やがて嫌になってきます。

②新しい環境そのものになじむ苦痛。私はもともと新しいことを覚えたり知らない場所に飛び込んだりするのが苦手です。異動はその苦手なことを数年ごとに強制的にやらされる仕組みでもありました。

③人間関係をゼロから作り直す消耗。誰が何を担当していて誰に何を聞けばいいのか。前の部署で時間をかけて築いた関係は異動と同時にほとんど持ち越せません。また一から顔と名前を覚え、距離のとり方を探る。何度くり返してもラクにはなりませんでした。この人間関係の疲れそのものについては、職場の人間関係に疲れた50代へに詳しく書いています。

「次こそ」ではなく、「ここから出たい」だった

異動をくり返していれば、いつか自分に合う職場にたどり着ける。そんなふうに考えて待っていたわけではありませんでした。

あったのはただ「とにかくここから出たい」という思いだけです。

なぜ希望を持てなかったのか。勤める年数が増えるほど、はっきりしてきたことがあるからです。この組織の中に、環境がよくて仕事が自分に合っている「いい職場」はどこにもなさそうだ、ということでした。

行きたい場所を望んでもその通りになることはほとんどありませんでした。それどころか希望を出したのに、かえってきつい環境に回されたこともあります。結局、自分は組織の都合でいいように動かされているだけではないか。その思いが少しずつ積み重なって、私は組織で働くこと自体にすっかり嫌気がさしていきました。

何度か異動を経験して、私はある結論にたどり着きました。結局、どこへ移っても同じだ。そう気づいてしまうと次の異動はもう希望の対象ではなくなります。目の前の苦しさから逃げたい一心で、それでも次を待つ。待つことは希望ではありませんでした。ただその場をやり過ごしていただけです。

50代の異動は、若い頃と何が違う?

同じ異動でも、50代で受けるのと20代・30代の頃に受けるのとでは重さがまるで違います。年齢とともにこたえ方が変わってきました。

まず、気力も体力も以前のようにはいきません。新しいことを覚える気力が続かない。記憶力も落ちてきました。

体力については、私の場合、こんな実感があります。1〜2時間の残業をすれば、そこで使った体力は翌日のぶんを先食いしたことになる。

次に、「また一から」への抵抗が年々強くなりました。あと何回これをくり返すのか。定年までに残された異動の回数を指を折って数えるようになりました。その残りは、あと2〜3回ほどです。回数が見えてしまうと、一回一回の重さが若い頃とは違って感じられます。

もうひとつ、50代ならではの事情があります。年下の同僚や上司が増えていくことです。年齢が離れるほど、こちらから話しかけるのに気後れするようになりました。人間関係を作り直す作業は、若い頃よりも難しくなっていきました。

「私はもう職場では使えない人だ」——そんなふうに自分を責めていた時期もあります。

いま、私は異動とどう付き合っているか

では、いまの私が異動とどう向き合っているか。結論から書くと、もう期待するのをやめて、そのぶん自分を責めるのもやめることにしました。

対処法として誰かに勧められる方法があるわけではありません。ここに書くのはあくまで私の場合の距離のとり方です。

ひとつは、自分を許すことです。若い頃のように覚えられない。やる気が続かない。それはこの歳になれば当たり前のことだと、ようやく思えるようになりました。組織の中で長く働き続けてきた。それだけでも私はよくやってきたほうだ——そう自分に言えるようになったのは、つい最近のことです。

もうひとつは、別の道の準備を水面下で進めていることです。ここが人生のすべてではない。そう思える場所を自分の手で作りはじめている。その事実が、次の異動をどこか他人事のように思わせてくれます。その準備の中身は早期退職を決めた理由の記事や、早期退職の準備チェックリストの記事に書いています。

まとめ:異動がつらいのは、あなたが弱いからではない

公務員の異動がつらいのは、仕事・人間関係・環境が数年ごとに同時にリセットされるからでしょう。あなたの適応力が足りないからでも、我慢が足りないからでもありません。

  • 異動のたびに、仕事も人間関係も環境も同時に一からになる。それが退職までくり返される
  • 「次こそいい職場」と期待できないのは、あなたが後ろ向きだからではなく、くり返し経験した末にたどり着いた実感かもしれない
  • 50代の異動は若い頃と重さが違う。気力と体力、また一からへの抵抗、年下が増える気後れ。年齢とともに変わっていく
  • 向き合い方に正解はない。私の場合は、自分を許すことと、別の道の準備を心の支えにしている

同じ気持ちを抱えている人が、少なくともここに、もう一人います。